外国人材を企業に受け入れたいと思ったら、具体的にどんなことをすればよいのでしょうか。中小企業にとって外国人材のメインとなるのは「外国人技能実習生」です。そこで本記事では、技能実習生を職場に受け入れるまでの「募集」から「在留資格申請」までの流れを解説します。
この記事の目次
団体監理型: 事業協同組合や商工会等の営利を目的としない団体(監理団体)が技能実習生を受け入れ、傘下の企業等(実習実施者)で技能実習を実施する方式
技能実習生の受け入れ具体化
外国人技能実習生の受け入れを決めたら、具体化のため最初は次のようなステップを踏みます。
監理団体に加入する
最初の一歩は、監理団体に加入することです。団体監理型での技能実習生受け入れは、当然ながら監理団体への加入は必須です。
監理団体とは、技能実習生の受け入れ全般について、企業をサポートしてくれる団体です。企業の希望に沿った技能実習生の募集から、在留資格やビザ取得のための書類作成や手続き、技能実習生の面接、受け入れ後に企業が適切に技能実習を実施しているかどうかの監査と指導、など幅広い業務を行っています。
監理団体は、令和3(2021)年3月末時点で 3,276 団体もあります。所在地はもちろん、得意とする業種や職種、募集をかけられる国籍などが異なります。企業それぞれの要望に応えられる監理団体が見つかるはずです。
外国人技能実習機構(OTIT)のホームページには、全監理団体の情報が掲載されています。参考にしてください。
求める技能実習生について相談する
加入後、企業は求める実習生人材について、監理団体に具体的な条件などを相談しましょう。
該当する人材がいないか、監理団体は現地の送り出し機関に連絡し、候補となる人材リストを作ります。リストに目ぼしい人材があれば、企業はオンラインまたは現地で面接を行い、内定を出すことになります。
「送り出し機関」とは、技能実習生の母国に拠点を置き、日本で実習を受けたい外国人を募集し、日本へと派遣する機関です。こちらも受け入れ段階の各種業務について、企業をサポートしてくれます。
企業の受け入れ体制整備
外国人技能実習生に採用内定を出したら、企業は受け入れに向けた社内体制を整備します。実習内容と目標を定め、指導体制を整えるための「技能実習計画」をつくらなければなりません。
技能実習制度は、日本で就労した外国人に技能や知識を習得してもらい、発展途上にある母国への技術移転の推進を目的とした制度です。単純労働のための働き手確保ではないため、面倒でも計画づくりは欠かせません。
受け入れ体制の整備では、次の3つに留意しましょう。
技能実習生の居住環境を揃える
技能実習生の住まいを準備しましょう。
実習生は同時に複数人を採用するのが一般的ですから、共同生活を送ってもらう事例が多くなります。会社近くのアパートや一軒家を借りたり、あれば社宅を提供したりします。
また、実習生が男女混合の場合は、それぞれ男女別に住めるようにしなければなりません。そして、男女で環境に違いが出ないよう配慮も必要です。
炊事用品や家具一式、電気・ガスなど光熱関係の手配も必要です。中でも重要なのはインターネット回線で、これは遠く離れた母国の家族たちとのコミュニケーションにはネット環境が不可欠だからです。異国でホームシックになりがちな実習生のため、安定したネット環境を用意しましょう。こころのケアも大切なのです。
3つの責任担当者を決める
実習生の受け入れでは、実習生に関する担当責任者を配置しなければなりません。次の3つの分野です。
- 技能実習責任者
- 技能実習指導員
- 生活指導員
「技能実習責任者」は、実習生の実習状況の管理を行い、技能指導する社員の監督を行います。
「技能実習指導員」は、実習生に技能指導を行う社員です。該当する技能について実務経験を5年以上持つ、常勤社員でなければなりません。
「生活指導員」は、生活面の指導をする社員です。日常生活全般で相談を受ける立場になりますから、コミュニケーション能力のある社員を配置したほうがよいでしょう。
賃金と労働時間は必ず適法にする
「実習」という名称はつきますが、技能実習生の賃金は、同一業務に就く日本人と同額かそれ以上でなければなりません。これは技能実習法で定められています。
また労働時間も、労働基準法に準じて原則1日8時間、週40時間が限度です(業種によっては例外もありますが、労使間で協定を結ぶ必要があります)。
技能実習生は、低賃金の労働力を確保するための制度ではありません。
受け入れ体制が整い、技能実習計画をつくったら、外国人技能実習機構地方事務所に申請します。申請の実務は、監理団体の多くがサポートしてくれるでしょう。
在留資格の申請
技能実習計画が無事に認定されたら、実習生たちが日本に居住するための在留資格の取得に進みましょう。
正確には「在留資格認定証明書交付申請」というのですが、これが少々手間かもしれません。
公式の「申請書」のほか、技能実習生の「顔写真」、「技能実習計画認定通知書」などが必要です。記入事項も多く、記入ミスがあれば却下されてしまいます。こちらも監理団体の助言を受けながら、ていねいに作成して下さい。
申請から許可を得て、在留資格認定証明書が交付されるまでは1〜3か月かかるでしょう。
在留資格認定証明書が交付されたら、これを母国にいる実習生内定者に送付し、日本入国のためのビザ取得申請を行ってもらいます。この手続きでは、送り出し機関側が主なサポート役になります。
入国後の講習受講
ビザを無事に取得できたら、技能実習生はようやく日本に入国できます。
ただ、すぐに企業の現場に入ることはできません。監理団体による約1か月の講習受講があります。日本語、日本での生活ルール、入国管理法や労働基準法などの基礎知識を学ぶことが義務なのです。
企業側はこの講習期間中に、社内体制や住居を万全なものにしておきましょう。計画策定から半年以上経っていますので、しっかり見直しと準備をしないと、実習生たちが到着してからトラブル続きになります。特に居住関係については、担当者は自分が住む気持ちになって準備を整えたほうがよいでしょう。
少々の時間と手間で、大きな成果を期待しましょう
外国人技能実習生を受け入れようと思ってから、会社に迎え入れるまでの流れを確認してきました。
たしかに時間と手間は少々かかりますが、企業がすべてを負担するわけでなく、監理団体がサポートしてくれます。
何より、実習生たちは人手不足に苦しむ会社にとって、貴重な戦力となる「金の卵」です。準備万端で迎え入れましょう。