外国人ワーカーがケガや病気をして、病院に行かなければならなくなったらどうすればいいでしょうか。「病院に持っていくものは?」「診療の流れは?」「保険は適用されるのか?」などいろいろわからないことが多いですね。本記事では、外国人ワーカーが医療機関を受診する際に企業がすべきサポートを解説します。外国人が病院で困っていることやその解決策、診療の流れや必要書類について紹介しますので、病院にかかる前に一度確認してみてください。
この記事の目次
日本の医療制度は外国人ワーカーにも適用される
じつは私たち日本人でさえ、日本の医療制度について十分に把握できている人は多くないかもしれません。ましてや外国人となると、ご存じない方がほとんどではないでしょうか。
まず、医療保険は、ケガや病気の治療にかかった医療費の一部が、加入者が出し合ったお金から支払われる日本の医療制度に基づいています。
医療保険には公的医療保険と民間の医療保険があります。
民間の医療保険は加入を自分で決められますが、以下の3つの公的医療保険はすべての日本国民に加入義務があります。
- 国民健康保険・・・・・自営業や無職の人などが加入する保険
- 健康保険・・・・・・・会社員や公務員、その扶養家族が加入する保険
- 後期高齢者医療制度・・75歳以上が加入する保険
外国人ワーカーは会社員ですから、「健康保険」に該当します。
健康保険に加入して日本人ワーカーと同様に保険料を支払わなければならず、その代わり医療費は3割負担になります。
外国人が病院で困ること、およびその解決方法
出入国在留管理庁の「令和3年度在留外国人に対する基礎調査報告書」によると、外国人が病院で診察・治療を受ける際の困りごとで一番多かったのが「どこの病院に行けば良いかわからなかった」でした。
症状をうまく伝えられなかった、受付でうまく話せなかったなど、いわゆる「言語の壁」が原因の困りごとがそれに続いています。
- どこの病院に行けば良いかわからなかった(22.8%)
- 病院で症状を正確に伝えられなかった (21.8%)
- 病院の受付でうまく話せなかった (16.1%)
- 診断結果や治療方法がわからなかった (12.9%)
- 医療費が高かった (11.0%)
「どこの病院に行けば良いかわからない」という悩みは、企業が事前に外国人ワーカーに症状を聞き出して、どの病院のどの科にかかるべきかを伝えてあげることで解決できます。
ヒアリングしてもわからない場合は、インターネットで症状を検索してどの科に行くべきかを調べたり、多くの科が入っている総合病院に電話で問い合わせたりしてみましょう。
「症状を説明できない」「受付や医師とうまく話せない」「診断結果や治療方法を理解できない」といった困りごとは、どれも「言葉の違い」から起こるものです。企業の担当者が同行する、通訳者に同行させるといったサポートが必要です。
また同調査によると「保険が適用されるかどうかがわからなかった」という困りごとを8.1%の外国人が感じていました。
健康保険料は外国人ワーカーの給料から毎月徴収されていること、そのため保険が適用され医療費は3割の負担で良いことなどを事前に説明しておく必要があります。
外国人ワーカーの病院での診察の流れと必要なもの
ほとんどの外国人ワーカーは、病院での手続きや必要なものがわかりません。
そうした不安から、病院に行く気を起こさず、病状を放置してしまうことも多いようです。
病院ではどのような流れで手続きが進むのか、何が必要なのかを本人に説明し、彼らの不安を取り除いておきましょう。
病院での診療の流れ
外国人の診療は以下のように進みます。
- 受付で名前や住所、年齢などの情報を診療申込書に記入し、症状を伝える
- 保険証と身分証を提出する
- 支払いに関する説明を受け、おおよその医療費を確認する
- 問診票に記入し、医者の診察を受ける
- 診断書が必要な場合は発行してもらう
- 医療費を支払い、処方箋があれば受け取り薬局で薬をもらう
特に注意すべきなのは、日本と外国では医療費の支払いまでの流れが大きく違うというところです。
日本では、診察を受けて最後に医療費が提示され、受付でそれを支払うのが普通の流れですが、外国では事前に治療内容や医療費を確認し、納得すれば診察を受けるという流れがほとんどです。
この違いから「医療費がいくらか説明がなかった」というトラブルが発生するおそれがあります。
医療費がおおよそどれくらいかかるのかを事前に尋ねておけば、外国人ワーカーも安心して診療を受けることができます。
診察に必要なもの
外国人が病院にかかる際に必要なものは以下のとおりです。
- 日本の健康保険証
- 身分証明書(在留カードやパスポート、どちらも持っていない場合は自国の身分証明書等、名前と顔が確認できるもの)
- 現金またはクレジットカード
身分証明書は在留カード、もしくはパスポートが一般的ですが、どちらも準備できない場合は、名前と顔が確認できれば自国の身分証明書でも問題ありません。
また、クレジットカード払いに対応していない病院もあるので、現金を用意しておくのがおすすめです。
病気やケガの際でも外国人ワーカーが安心できるように
外国人ワーカーの多くは、病院に行かなければならなくなると、言葉の違いや手続きの流れ、医療費などで不安に陥ります。
企業の担当者はどの病院の何科に行けば良いのかを外国人ワーカーに伝え、手続きの流れと必要なものを教えておきましょう。
外国人は日本語が流暢でないため、受付や医師に自分の症状を伝えるのが容易ではありません。通訳ができる従業員を同行させたり、外部の通訳者に依頼したりするなどのサポートを行いましょう。
最近は、病院によっては外国人対応スタッフが在籍している場合もあります。事前に調べて外国人対応可能な病院に行けば、企業は同行の必要がなくなり、外国人ワーカー自身も安心して診療を受けることができます。