外国人ワーカーを採用することになった場合、雇用契約書を結ぶ必要があります。日本人との雇用契約書とはどのような違いがあるでしょうか。
外国人雇用の重要なステップとなりますので、ぜひ参考にしてください。
この記事の目次
外国人ワーカーの雇用には雇用契約書は必須?
まず、外国人が日本で働くには在留資格(就労ビザ)が必要です。
本人が在留資格を申請する際に、これから働く会社との雇用契約書の写しか、労働条件通知書等を出入国在留管理庁に提出しなければなりません。
このため、雇用契約書はどうしても必要になります、
ちなみに、労働条件通知書と雇用契約書は以下のような違いがあります。
労働条件通知書: 会社から外国人に渡す一方通行の労働条件の詳細が書かれたもの。
雇用契約書: 労働条件について会社と外国人が合意をしたことの証明書。
雇用契約書は一方的な「通知書」とは違うので、双方が署名・押印し、1通ずつ保管します。
在留資格の申請の際には、出入国在留管理庁は労働条件を審査するため、このどちらかを提出する必要があります。
また、注意しなければならないのは「在留資格が認められることを前提とした、予約のような雇用契約」になるということです。
つまり「在留資格が認められて初めて効力が生まれる」(停止条件付き雇用契約)などといった条項を設けることになります。
「この労働契約書は、当社に就労可能な在留資格の許可を条件とし、就労が認められない場合には無効とする。」
こうした条項を設けておけば、在留資格が認められなかった場合、その雇用契約は無効となります。
このことは、必ず雇用する予定の外国人ワーカーに説明しておきましょう。
雇用契約書に盛り込まなければならないもの
雇用契約というものは、働く人と雇う人の双方が誤解なく内容を理解し、合意していれば、口約束でも成立します。
ただし、労働基準法においては、次のような事項については必ず書面を渡して労働者へ明示しなければならないことになっており、違反すると30万円以下の罰金が科されます。
- 労働契約の期間に関する事項
- 期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項
- 就業の場所及び従事すべき業務に関する事項
- 始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇 並びに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項
- 賃金(退職手当及び第五号に規定する賃金を除く。以下この号において同じ。) の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
- 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)
ただし、昇給に関することは口頭で伝えても問題ありません。
また、就業規則等に定めがある場合は、次についても明示しなければなりません。
日本人の場合なら口頭の説明でもいいのですが、外国人ワーカーには書面で渡した方が安心できます。就業規則の該当ページのコピーでも構いません。
- 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方 法並びに退職手当の支払の時期に関する事項
- 臨時に支払われる賃金(退職手当を除く。)、賞与及び第八条各号に掲げる賃金 並びに最低賃金額に関する事項
- 労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項
- 安全及び衛生に関する事項
- 職業訓練に関する事項
- 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
- 表彰及び制裁に関する事項
- 休職に関する事項
雇用契約書は、外国人ワーカーが理解できる言葉で書かれていなければなりません。
日本語の読み書きが苦手な外国人には、母国語の雇用契約書も同時に作って、「私は理解できる言語で労働条件の説明を受け、それを承諾しました」という文言を雇用契約書に盛り込んでおいてください。
母国語の雇用契約書も2通作成し、会社と外国人ワーカーが署名・押印し、1通ずつ保管します。
もし日本語がよくわからないまま署名・押印させても、労働条件を通知したことにはなりません。労働基準法違反になります。
国籍を問わず、労働者には労働条件が契約と異なっていたら「話が違う」と契約を解除できる権利があります。
外国人ワーカーの場合、それだけではなく、14日以内に母国へ帰ることになった場合は、その費用を会社が負担しなければなりません。
使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。
2 前項の規定によつて明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。
3 前項の場合、就業のために住居を変更した労働者が、契約解除の日から十四日以内に帰郷する場合においては、使用者は、必要な旅費を負担しなければならな い。
労働条件の書き方
外国人ワーカーとの雇用契約は、在留資格申請においても審査の対象になりますので、労働条件を明確に示さなければなりません。
外国人は、日本人よりも「契約」というものをシビアに捉えて、自分の権利を迷いなく行使する傾向があります。
日本人なら「空気を読む」「気を利かせる」というような暗黙の了解が通じないため、命じられた業務がもし契約に記載されていなければ行ってくれません。
前項で説明した絶対的明示事項に沿って、重要なことを説明していきましょう。
- 労働契約の期間に関する事項
期間を定める場合は、労働基準法によって原則上限3年までです。また試用期間は一般的に3~6ヶ月間であることが多いです。 - 就業の場所及び従事すべき業務に関する事項
勤務地が当初決めたものが変わると、「契約と違う!」と言われてしまいます。トラブルにならないようにするためには、勤務してもらう可能性のあるすべての勤務地を記載することです。また記載されていない勤務地となる場合があるということも明示しておきましょう。 - 就業の場所及び従事すべき業務に関する事項
肝心の業務内容ですが、在留資格申請が通りやすくするため、「総合職」「一般事務」のようにアバウトに書くのではなく、なるべく詳しく書きましょう。
また、次の点が重視されます。業務内容で重要な内容- 在留資格該当性・・・・・・その人の在留資格に当てはまっている業務か
- 専門性と職務内容の一致・・学んできたこと、磨いてきた技術が必要な業務か
上記以外にも、申請に添付する理由書等と矛盾していない業務内容でなければなりません。
記載されていない業務も発生することがあれば、その旨も明示しておきましょう。 - 始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇 並びに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項
日本人は始業時刻が9時だと伝えれば、常識的な人なら、遅くとも10分前には席につき、その10分ぶんの賃金を要求したりはしませんが、これは外国人には理解できない風習です。曖昧にせず詳しく記載し、説明してください。 - 賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
「技術・人文知識・国際業務」「技能」「経営管理」などの在留資格は、日本人が従事する場合の報酬と同等額以上でなければなりません。
同じ業務をしている日本人がいない場合は、「他社も含めて、その地域でその業務に従事する日本人従業員と同等程度の賃金」となります。
月給制の場合も、時給換算して最低賃金を下回るようなことのないように注意してください。 - 退職に関する事項
外国人ワーカーが退職を申し出ることになった場合はどんな手続きで何日前までに申し出なければならないのか、ということを詳細に記載してください。
退職時にトラブルが発生することが多いので注意しましょう。 - 労働保険(雇用保険、労災保険)、社会保険(厚生年金、健康保険)について
これらについても明示したほうがいいでしょう。
母国とは制度が異なるので、内容が理解できないこともあるかもしれませんが、どんなときに役立つものなのかを丁寧に説明してあげてください。外国人ワーカーとの雇用契約書 まとめ
以上、外国人ワーカーを雇う場合の必要な雇用契約書について解説しました。
基本的には、注意すべき点は日本人と同じです。ただし外国人ワーカーの場合は母国語で契約書を作らなければならないことがあります。
もし在留資格が通らなかった場合の停止条件は、忘れずに明示し、きちんと説明してください。