外国人の雇用活動で、最初の選考ポイントは応募書類や履歴書などの「書類審査」です。書類の内容から応募人材を絞り込めれば、その後の選考もスムーズに進みます。留学生や高度外国人材を採用する場合と、外国人技能実習生を採用する場合のそれぞれのポイントを解説します。
この記事の目次
留学生や高度外国人材などの書類審査ポイント
書類審査の前に、その職種に「外国人を採用する理由」を明確にしなければなりません。
というのも、日本政府は「その外国人でなければならない理由」がはっきりなければ在留資格を与えていないからです。「日本人でも代替できる業務ならば、日本人の雇用を優先させる」ということになっているのです。
「外国人を採用する理由」を明確にした上で、書類内容を確認していきましょう。
募集職種の内容に、外国人応募者の学歴(職歴)がマッチしているか
留学生の場合、応募者が学んできたことが、募集している職種と関連がある分野かどうか確認しましょう。
たとえば海外の金融市場調査を任せたいなら、経済学や経営学などを専攻していることが必要です。「大卒だからいいじゃないか」というわけにはいきません。日本のみならず、どの国でも、外国人への在留ビザ発給の際には学歴と職種との関連性が問われます。
職歴のある外国人転職者の場合は、学歴に加えて、どんな企業に在籍し、どんな立場(権限)でどんな職務を担っていたのかを応募書類から確認します。
職務で上げた成果も記入してあればなおよしです。
なお、転職者の場合、転職回数ごとに新卒時の専攻学部と職務の関連が薄くなることもあります。その場合は直近の職歴のほうが、在留資格の取得では重要になります。
在留資格の種類と期限
日本在住の外国人の応募では、「在留資格」が何であるかということも重要なチェックポイントです。
在留資格は19種類あり、学歴が大卒以上の技術者やホワイトカラーを対象とする「技術・人文知識・国際業務」または「高度専門職」、ある専門職種を対象とした「法律・会計業務」「介護」、外国料理の調理師、スポーツ指導者、航空機の操縦者などの「技能」、そして「留学」、「家族滞在」などがあります。
募集職種に適った資格なら、そのまま選考を進めても構いませんが、もし異なっていたら、そのまま採用するわけにはいきません。
例えば、資格が「法律・会計業務」なのに、外国料理店で調理師として働くことは違法になります。どうしても採用したい場合は、在留資格の変更手続きが必要になり、完了まで数か月かかります(変更が認められないこともあります)。
なお、卒業見込みの留学生は就労資格を持っていませんから、こちらも在留資格の変更が必要です。
在留期限も要注意です。履歴書または職務経歴書に記載した期限が誤っていたため、不法滞在になってしまう例もあります。
面接時には、本人の同意を得て在留カードの現物を直接確認することが必須です。
英文履歴書のスタイルをみる
これは応募者本人の持つ性格や職種への適性を見るためです。
日本語の履歴書は、市販のものならばどれもほぼ同じ形式ですが、英語圏の履歴書は一定の「基本」さえ守れば、作成者がアレンジする余地があります。
見出し部分と具体的な記述部分で文字フォントを変えたり、文字サイズに違いを持たせたりして、自分らしさを出せます。
つまり、履歴書をみれば、応募者が細かい性格なのか、作り込むタイプなのか、粗雑なのか、ということもわかるのです。たとえ「テンプレ」を利用していても、どんなテンプレを選択したかで性格を推し量れます。
外国人技能実習生の書類審査ポイント
外国人技能実習生の採用では、監理団体が候補者探しをサポートしてくれますが、面接対象者を絞り込む段階では、実習生候補の履歴書を確認することになります。
候補者たちにとっては、自分の力で履歴書を作成しなければなりません。
履歴書のスタイル
実習生候補者の履歴書は自筆であることは少なく、パソコンを利用したものがほとんどです。しかし、そこから次のようなことが読み取れます。
- 顔写真・・・・スナップ写真やぶれた写真を利用するなど採用面接の格式に合っていないものを使っていないか
- 学歴や経歴・・技能訓練校卒なのに大卒と記入するなどの虚偽記載はないか
- 文章・・・・・候補者ではなく送り出し機関が代筆したと思われる「過度に洗練された」スタイルではないか
- 文体・・・・・文字フォントやサイズが混在したままで、提出前のチェックを怠っていない(あるいは気にしてない)か
- 志望動機・・・募集業務の内容と関係のない内容になっていないか
まだ日本語に慣れていない実習生候補者たちですから、現地の送り出し機関がある程度履歴書の作成に関与するのは、仕方がありません。
国語の試験のように、あまり細かな内容までチェックしても意味はありませんが、全体的に見れば、一生懸命に作ったものかどうかはわかるはずです。
企業側としても「文章は本人が作ったものしか認めない」「代筆があってもいいが顔写真には気を使うべき」など、履歴書の選考基準をあらかじめ設けておくといいかもしれません。
母国を離れて日本に少なくとも3年間住んで、その企業での実習を「まじめに」志望しているのなら、履歴書づくりに手を抜くことはありません。
履歴書づくりへの姿勢は、実習に取り組む姿勢にも通じていると考えていいでしょう。
書類選考は細部と全体に留意しましょう
留学生や高度外国人材の場合、企業としては「外国人雇用がなぜ必要なのか」という方針をしっかり持つことが大事です。出入国管理局になぜその外国人を採用したいのか、企業がきちんと説明できる「経歴や学歴」と「在留資格」が必要になります。
外国人技能実習生の場合は、履歴書の記載内容の正確さはもちろんですが、顔写真や文章、文体などを総合的に見て、「まじめに実習に臨んでくれそうか」を判断しましょう。