外国人ワーカーも税金を納める必要があります。正確に言えば、1年以上の在留資格がある外国人は日本人と同じように課税対象です。ただし、日本での居住が1年未満の場合は課税免除になるなど、日本人とは少々扱いが異なる点もあります。外国人雇用を検討する企業の担当者に参考にしていただけるように、外国人ワーカーの税金に関して知っておくべき基本的な知識を解説します。
この記事の目次
税の徴収方法は在留期間で異なる
外国人も日本人と同様に所得税が課税されますが、「居住者」「非居住者」「非永住者」「非永住者以外の居住者」のいずれなのかによって課税範囲や課税方法、計算方法が異なります。
まず、居住者とは、「日本国内に住所があるか、現在まで引き続いて1年以上居所がある個人」です。
在留期間で言えば、1年以上の在留期間の外国人ワーカーは「居住者」、1年未満は「非居住者」ということになります。
日本で職業に従事するために入国した外国人ワーカーは原則として居住者となりますが、日本滞在期間が1年未満ということが雇用契約等で決まっているような場合は非居住者になります。
また、居住者はさらに「非永住者」と「非永住者以外の居住者」に区別されます。
非永住者・・・・・・・・永住する意思がなく、5年以下の期間、国内に住所・居所を有する者
永住する意思がなく、1年以上5年以下の期間、国内に住所・居所を有する者
非永住者以外の居住者・・永住の意思に関係なく、国内に5年超の期間、住所又は居所を有する者
永住の意思があり、国内に住所を有する者
永住の意思があり、1年以上5年以下の期間、国内に居所を有する者
「居住者」「非居住者」「非永住者」「非永住者以外の居住者」は慎重に判定し、必要であれば税務署などに相談してください。
外国人ワーカーの所得税とは
所得税とは、お金を得たときに支払う税金です。所得のある人は所得税を支払う義務があり、原則として毎年1月1日からの1年間で得た所得のすべてに課税されます。
課税の対象となる外国人ワーカーの所得
日本で生活する外国人労働者が支払うべき所得税の課税対象は、以下のとおり3つの区分によって変わってきます。
居住者 | 永住者 | 日本国内と海外で生じたすべての所得が課税対象になる |
---|---|---|
非永住者 | 日本で生じた所得、海外で生じた所得で日本国内で支払われたもの、海外から日本へ送金された所得が課税対象になる (海外で支払われた海外所得以外すべて) |
|
非居住者 | 日本国内で生じた所得が課税対象になる |
この表で「課税対象」とされている所得を元に、次の計算式で税額を計算します。
非居住者だった場合は、原則、20%の税率で源泉分離課税方法で納税します。
外国人ワーカーの所得税の納付方法
居住者であった場合は、外国人ワーカーは「給与所得者の扶養控除等申告書」を会社に提出します。
会社では、給与支払いの際に、「給与所得の源泉徴収税額表」で扶養親族等の数で税額を算出し、源泉徴収を行います。年末の給与支払いの際には「年末調整」によって、その外国人ワーカーが納付する所得税の精算を行います。税率は超過累進税率です。
非居住者の外国人は、源泉徴収所得税20%(復興特別所得税を加えて20.42%)が適用されます。確定申告は必要ありません。
研修ビザの場合は入国する際に申告した研修手当を超えなければ課税はされません。
外国人ワーカーの所得税控除
日本人と同じように、外国人ワーカーにも所得税控除や税額控除があります。
所得控除として代表的なのは、基礎控除や配偶者控除、社会保険料控除や医療費控除などです。これらや20万円以上の副業収入は年末調整では還付されないので、確定申告を行ってもらってください。
扶養親族として控除の対象となるかどうかは、毎年12月31日付の状況で次のように判断します。
- 納税者の親族である者
- 納税者と生計を共にする者
- 年間の所得金額が38万円以下の者
- 他の者の扶養親族になっていない者
外国人ワーカーが海外でも税金を払っている場合
外国人ワーカーの「居住者」の中には、日本国内の所得だけでなく、海外からの所得についても所得税の対象となります。
海外からの所得は、その国の税金も賦課されるため、二重納税ということになります。
この場合、日本と租税条約を締結している国なら、その国に納税した税額を申告すれば、日本の所得税額から控除を受けられます(外国税額控除)。税額の範囲については国により異なります。
非居住者であった場合も、租税条約を結んでいる国とは「短期滞在者免税」の適用を受ける場合があります。その条件は以下の3点すべてをクリアしていることです。
- 183日の滞在期間を超えないこと
- 相手国の法人から給与が支払われていること
- 日本法人に給与を負担させていないこと
外国人ワーカーの住民税
住民税とは、住んでいる自治体に支払う税金です。道府県民税と市町村民税の2つがあります。多くの場合、外国人ワーカーも住民税を支払わなくてはなりません。
住民税額は次の計算式で計算します。
所得割・・・所得金額に応じて負担する金額。
前年の所得金額 × 10%(市町村民税6% + 道府県民税4%)で求める。
均等割・・・所得金額にかかわらず同じ自治体に住む人が定額で負担する金額。
地域差はあるが、大体5,000円前後。
※前年度の所得が33万円以下の場合は非課税となる。
住民税を支払わなければならない外国人ワーカー
1年以上の在留資格を持つ居住者である外国人ワーカーは、住民税を支払う必要があります。
非居住者は住所がないため住民税を納付する必要はありません(ただし不動産を所有している場合は均等割のみ発生します)。
上記の計算式で税額が決まり、1月1日時点の住所地に納付しますが、多くの会社では特別徴収で給与天引きんあります。普通徴収の会社の場合は、外国人ワーカーがきちんと納税しているかを注意してください。
留学生時代にオーバーワークしていた外国人ワーカーには注意
留学生時代にオーバーワークをしていなかったかを雇用の際に確認してください。
本来、留学生は就労できませんが、資格外活動許可を得た場合は週28時間までアルバイトができます。学費や生活費、母国での仕送りを行うためにこの時間を超えてアルバイトする外国人ワーカーも多いのです。
昨今、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格審査は厳格化しており、留学生時代のアルバイト状況についても調査することが多くなりました。
せっかく採用した外国人が在留資格を取得できないかもしれないので、必ず確認してください。
オーバーワークをしている留学生の多くは、住民税を滞納しています。
所得税とは異なり、住民税は給与からの天引きとはなりません。また納付のための通知書は基本的に郵送で届きます。このため、納付を忘れる外国人ワーカーがほとんどです。
採用された際の在留資格変更許可申請では、納税証明書は必要ありませんが、在留資格を更新する際には納税証明書が必要となります。
税金を未納・滞納すると、在留資格申請が通りにくくなります。
永住者ビザ、結婚・配偶者ビザは特に申請が通りにくいです。永住者ビザの許可条件には以下のようなものがあります。
このため税金未納・滞納があるとビザの申請が通らない可能性が高くなるのです。
結婚・配偶者ビザには他のビザとは異なる審査ポイントがあります。
- 偽装結婚ではないか
- 夫婦で安定した収入を得て生活を送れるか
このため課税証明書や納税証明書などを入国管理局に提出しなければなりません。それにより税金の未納などが発覚すると申請が却下されてしまいます(やむを得ない理由による場合はビザを取得できる可能性もあります)。
※特定技能に関しては、納税証明書などの税金未納・滞納などを確認する提出書類はありません。しかし、在留資格によっては納税証明書が必要なこともあり、そこで税金未納・滞納が発覚すると認定が下りないので、注意が必要です。
外国人ワーカーの税金に関する基本知識 まとめ
外国人ワーカーの税金の基本知識については以上です。
日本に中長期滞在する場合は、ほとんど日本人と同じ扱いになりますが、租税条約など外国人の雇用特有の取り決めがありますので、注意が必要です。
本記事のポイントをまとめました。
- 外国人ワーカーも所得税の納税義務がある。各種控除も使用できる
- 非居住者の場合は源泉徴収20%を引かれるが、短期滞在者免税を適用できれば非課税となる
- 住民税は居住者には課税されるが、非居住者には課税されない
- 採用する際にはオーバーワークしていないか、住民税を滞納していないか、注意する。
外国人ワーカーのほとんどは日本の税率についての知識がなく、年末調整や確定申告などを行うことは困難ですから、会社でサポートしてください。