日本で働きながら技術や技能を習得できる「外国人技能実習制度」は1993年に導入された制度です。この制度は発展途上国の若者たちに技術習得と賃金を得る機会を与えるだけでなく、彼らを受け入れる日本企業側にも多くのメリットがあります。本記事ではそれらを紹介します。
人材不足が解消される
外国人技能実習生の受け入れで最初に思い浮かぶメリットは、「人材不足の解消」でしょう。
ご存じの通り、日本では少子高齢化が進み、労働人口が減少していくことが予想されています。労働力そのものが縮小する中、農林水産業や建設業、製造業など、体力や忍耐力が求められる職種では就労希望者が少なく、より深刻な人材不足に陥っています。
外国人技能実習生たちは、そうした現場でも積極的に就労を志願し、貴重な労働力になってくれます。業務内容に納得した上で来日していますし、技術や技能を習得しながら給与を得られますから、実習生たちは高い勤労意欲を持っています。
また、日本での技能研修を希望する発展途上国の若者は多く、何段階もの選抜をくぐり抜けてきた優秀な人材でなければ、企業内定までたどり着けません。人材不足を解消しながら、優秀な人材を確保できるのが実習生制度なのです。
3年間単位で人材確保のメドがつく
人材不足と表裏一体の問題である「離職率の高さ」に悩んでいる中小企業にとって、外国人技能実習制度はメリットになります。
実習生たちは、一般的に3年間の日本在留資格を取得できます。
せっかく日本で実習する機会ですから、その3年間は一生懸命に就労します。つまり、実習生がいることで、最低でも3年間は人材確保のメドがつくのです。
人員計画は、人材がいつ辞めるか分からない状況では作りようがありません。実習生がいれば3年単位で計画作りができますから、企業も中長期の事業計画が立てやすくなります。
なお、2017年11月に施工された「技能実習法」により、企業の受け入れ体制や実習生の能力が優良だと認められた場合は、実習期間が5年まで延長できることになりました。これを活用すれば、さらに長期的な人員計画が立てやすくなります。
企業風土の活性化につながる
外国人技能実習生たちは、企業風土にも前向きな変化を起こします。
人材不足と高い離職率に悩んできた企業では、社員の高齢化が進み、雰囲気もマンネリ化しているところが多くなっています。
そこに20~30代の若手で、しかも日本とは異なる文化背景を持つ外国人技能実習生が入社してくるのですから、社内の雰囲気は一変するでしょう。
会話や人的交流に新しい変化が生まれ、停滞していた社内の雰囲気は明るくなるはずです。
社員の勤労意欲を高める
外国人技能実習生を受け入れることで、既存の社員たちの勤労意欲も高まります。
実習生たちは、期限のある在留期間内に技能を身に着けようと真剣になっています。そんな彼らに、自分の持つ技能を伝える立場の社員は、自分の業務に「やりがい」を見出すようになります。
これまでは若手に仕事を教えてもすぐ辞めてしまったりして、慢性的な虚脱感にとらわれていた社員たちが、実習生によってプライドを取り戻し、就労意欲を高めてくれるのです。
また、実習生の母国であるベトナムやインドネシア、フィリピンなどは、日本以上に年長者を敬う文化があり、年長社員にとても礼儀正しく接します。これも既存社員のモチベーションを高めることにつながるでしょう。
業務の標準化が進む
技能実習生を受け入れることによって、業務の標準化を実現できます。
実習生たちは、基本的な日本語を学んで来日しています。しかし文化的な背景が異なるため、日本人のように「ここまで言えば分かるだろう」という教え方は禁物です。作業内容をマニュアル化して教えるのが最も効率的なのです。
このマニュアル化は、実習生の受け入れ前には準備を始め、受け入れ後も随時アップデートしていくことになります。それによって、社内業務の標準化が実現します。無駄な工程が明確になり、ある人しかやり方を知らない(つまり、その人が辞めたら会社経営に支障が出る)ような、過度に「属人化」した業務もなくせるでしょう。業務の標準化が進むことで、将来的には会社業務のデジタル化(DX化)もしやすくなるはずです。
コンプライアンス意識が高まる
技能実習生の受け入れによってコンプライアンス意識も高められます。
技能実習生には、日本人の労働者と同じように労働関係の諸法令が適用されるため、労働時間や休日、健康管理などで違法がないよう徹底しなければなりません。
また、技能実習生の募集から在留資格やビザ取得、各種講習などで受け入れ企業をサポートする「監理団体」は、実習生の就労環境に不備がないか、定期的に企業の監査を行います。違反があれば各種ペナルティもありますので、自然と企業のコンプライアンス意識が高まっていくのです。
日本には、休日が少なかったり大幅な時間外労働があったり、労働環境が慢性的な違法状態にある中小企業もたくさんあるのが現状です。実習生の受け入れがきっかけとなって違法状態が解消された結果、しっかり休養できた社員は仕事への意欲が高まり、企業の生産性が向上したという事例も見られます。
国際貢献できる
外国人技能実習生の受け入れは国際貢献にもなります。
外国人である彼らを受け入れ、ともに働くことで、お互いの文化理解は自ずと深まります。実習期間を終えて帰国した彼らも、日本での生活を懐かしみ、習得した技能を母国の発展に生かしながら、多くの人々に日本の良さを伝えてくれるでしょう。
実習生制度は、日本と発展途上国との外交政策でもありますが、受け入れ企業は「草の根外交」の一翼を担っているのです。
海外進出の契機になる
外国人技能実習生の受け入れが、中小企業の海外進出につながることがあります。
そのきっかけになるのは、実習生の帰国です。
実習生には優秀な人材も多く、受け入れ企業で中核的な人材に育っていくことも珍しくありません。そんな彼らも、在留資格の制限によって3~5年をメドに帰国しなければなりません。企業にとっては貴重な人材を失うことになります。
そこで近年では、実習生が母国に帰るタイミングで、企業が帰国先に「現地法人」を設立し、帰国後も企業の戦力になってもらう事例が増えているのです。業種は、溶接加工業や、建築設計などさまざまです。
思わぬ形での海外進出とも言えますが、企業にとっては新たな事業チャンスの創出になるのではないでしょうか。
結論。技能実習生受け入れは企業を強くする!
外国人技能実習生の受け入れには、多くのメリットがありました。改めてまとめると次の8つです。
- 人材不足の解消
- 3年間単位で人材確保のメドがつく
- 企業風土の活性化につながる
- 社員の勤労意欲を高める
- 業務の標準化が進む
- コンプライアンス意識が高まる
- 国際貢献できる
- 海外進出の契機になる
このうち、メリットが早く実感できるのは1と2で、これだけでも欲しい企業は多いはずです。
次第に効果が実感できるものが3〜7の5つです。
最後の8は今後ぜひ実現し続けてほしいメリットです。そこまで実現できたら、外国人技能実習生制度のメリットを120%享受できたと言えるでしょう。
企業の皆さん、これらのメリットを手に入れたいと思ったら、ぜひ外国人技能実習制度の活用を検討してみましょう。